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活躍する卒業生

野口和雄先生(平成2年卒)

1992年から大正製薬(株)において薬理研究では試験責任者・プロジェクトリーダー、臨床薬理では治験計画責任者として、新薬開発を担当、OTC医薬品および健康食品研究ではグループマネージャーを歴任。
2018年から(株)フコクにおいて、診断薬研究開発のグループリーダーを担当。
2020年4月より武庫川女子大学薬学部健康生命薬科学科食品機能科学研究室 教授
博士(薬学)
学校法人 東邦大学薬学部 客員教授
公益社団法人 日本薬理学会 学術評議委員
公益社団法人 日本薬理学会 薬理学エデュケーター
現職までのご略歴をお聞かせください ・・・
1992年大学院を卒業後、大正製薬(株)の薬理研究室に配属されました。薬理研究では試験責任者・プロジェクトリーダーとして、循環、中枢、代謝などの幅広い領域において、多数のプロジェクトに参画しました。 2000年からは、基礎薬理または臨床薬理のリーダーとして、開発候補物質の研究開発を推進しました。担当した新薬開発プロジェクトは17になります。うち開発が成功したのはロコアテープとルセフィ錠の2つです。ロコアテープの開発においては、承認申請へ向けた試験資料の整備を担当しました。それまでに製品に成らなかった沢山のプロジェクトに参画し、そこで習得した膨大な技術や知識、俯瞰的に物事も見られる力、人脈やひとを動かせる力(協働力)が大きく役立ちました。ルセフィにおいては、利尿薬との薬物相互作用試験の考案や解析を行いました。専門性(薬理・循環)を深める努力を長年継続してきたことで、基礎での経験を臨床でスムーズに応用できました。その後、OTC医薬品および健康食品研究のグループマネージャー、2018年から(株)フコクにおいて診断薬研究開発のグループリーダーを担当しました。臨床開発時代の心循環器系、特に心電図をはじめとするバイタルデータの判読方法の社内講義、また東邦大学薬学部学生への「医薬品開発学」の講義の経験から、研究に加えて教育(人材育成)に携わりたいと思い、2020年4 月より武庫川女子大学薬学部の食品機能科学研究室の教授を拝命しました。

現在取り組んでいらっしゃることをお聞かせください ・・・
食品には3つの役割があります。栄養、味覚風味、そして、健康増進です。特定保健用食品(特保)の中には複数の機能性を掛け合わせたダブル・トリプルヘルスクレームの商品が多く展開しています。生活習慣病、例えば「血圧が高めの方」に適する新規食品成分の探索と作用機序の解明に取り組んでいます。また、超高齢化社会で急増する心不全、いわゆる「心不全パンデミック」 の低減に寄与できる、心保護作用をうたった健康食品は現在ありませんので、心保護作用を有する食品成分の探索と作用機序の解明にも取り組んでいます。研究対象の食品素材はヒハツやスダチ、ザクロなど、これら食品の作用機序をサイエンスベースで研究しています。いずれは動物実験のエビデンスなどから得たデータから臨床試験に展開し、最終的には商品化したいと考えています。ドライ研究にも取り組んでいます。特保などの食品における健康増進への費用対効果の解析も行って、この分野は取り組んでいる方がいないので今後の展開が楽しみです。 

今後取り組んでいきたいことをお聞かせください・・・
取り組みたいことは3つあります。1つ目は人材育成です。教えることの楽しさに目覚めた私は、これまでの企業での研究開発の経験を活かして、創薬研究者、臨床開発者、臨床薬剤師などとして活躍できる有能な人材を社会へ多く輩出したいと考えています。2つ目は科学探求です。現在の取り組みでもお話しましたが、新規の食素材の機能性についての基礎研究を実施し、エビデンスを発信していきたいです。そして最後は社会貢献です。科学探求を通じて、将来的には新規の食素材を商品化し、国民の健康寿命延伸に繋げることで社会に還元していきたいと思っています。
 
東邦大学での学びについて・・・
化学に興味があった私ですが、大学3年生のときに受講した生化学で、生体システムに魅了されました。修士課程に進んだ私は、薬物学教室の重信弘毅先生の指導のもと、受容体や拮抗薬のシステマチックな奥の深さに触れ、生体内の電気信号を探るという研究に出会うことができました。修士課程では、自分自身で自由に考えて研究を進めることができました。先生方が研究に対してレールを引くことはありませんでした。私が考えた研究方針について、先生方がNOとは言うことはなく、自主性をもって研究に取り組むことができたのです。つまり自分で立案して、失敗したら再検討していく、深堀して考える技術が身についたのだと思います。この経験が社会に出たあとで、医薬品開発に活かされることになります。医薬分野の研究開発職で成功体験を得られるチャンスは少ないです。数少ないチャンスの中で、研究職として新薬開発に携われたのは、先生方の教育指導のおかげだと思います。ひとつのことを深く追及する技術を習得する環境を作ってくださったおかげで、新薬開発として成功することができました。

薬学を学んでいる在学生へ・・・
薬学部卒業後にはいろいろな道があります。臨床薬剤師だけでなく、治験やCRO、基礎研究や開発もあります。医薬分野の研究開発職に限らず、成功体験を得られるチャンスは少ないです。待っていただけではチャンスは来ません。「自分でチャンスを掴む」、「そのチャンスを活かし、成功に導く」ためには「専門性」、「俯瞰力」、「協働力」を身に着けられるように日々の努力が重要です。
第一に実施して欲しいことは「専門性」の向上です。自分の得意または好きな領域の専門的知識を身に着けると共に、一つの課題に対し、深堀して考える技術を身に着けてください。具体的には卒業研究テーマを、しっかり行ってください。
次に、「俯瞰力」を身に着けることが重要です。薬学という沢山の領域の学問がある中で、各学問、各領域がどのような連携で成り立っているのかを把握してください。また、自分の卒業研究テーマを軸として俯瞰力を身に着けることもお勧めします。
次に、社会人になって協働力を持てるよう、学生時代から、人と人とのコミュニケーションを大切にしてください。
東邦大学には鶴風会があります。そこでは様々な分野で活躍する卒業生と知り合えて、貴重な人脈を培うことができます。情報交換も行えます。通常のコミュニケーションでは、5,6割の情報提供で終わりになるところが、同門だと9割以上の情報をもらえることが多々あります。ぜひ、鶴風会を活用して様々な先輩後輩と知り合ってください。鶴風会はあなたのメリットになります。
薬学部を目指す学生に向けて一言お願いします
東邦大学は、学生ひとり一人、こまめに指導してくれる大学です。
担任制を導入しているので入学から卒業まで親身になって先生方が指導してくれます。薬学部は6年生教育になって以降、科学の進歩に伴って、膨大な量の勉学が必要となりました。そのような中で、薬剤師国家試験において、高い合格率を維持している東邦大学は素晴らしいと思います。
社会に出たら必要なものとして、“専門性”があります。膨大な量の勉学を行いながら、研究に触れ合う時間は限られてくるため、専門性を向上させることは大変かもしれません。しかし、学生の意向を尊重してくれたり、自発的な活動を支援してくれたりする先生方や、充実した教育体制を兼ね備える東邦大学は、その専門性を磨き上げることができる学校だと思います。
好きな言葉
 一念天に通ず
ライフステージで目標を設定し、その目標が達成できるよう日々の努力と強い信念を持って行動すれば、その目標(願い)は天に通じて必ず叶います。諦めることは簡単です。辛くて諦めそうになった時、もう1日、もう1か月、もう1年頑張ろうという行動をとれば、必ず(願い)に近づけるかと思っています。